vol.13
買い付けで渡米するたびにいろんな人と様々な出会いをする。
行く度にお世話になる人、顔見知りになったお店屋さんのお姉さん、
そこに行くと、必ず待っているおなじみの顔がある。
逆に、たまたま居合わせた人たち、例えば、飛行機で隣になった人、
ス−パ−マ−ケットで同じ列に並んで、レジ待ちしていた人・・・とか。
直接会話をしたわけでもなく、もう2度と出逢えなそうな人たち、
そんな、一度きりの短時間の出会いの中でも、やたらとインパクトがあり、
忘れたくても忘れられない、旅の土産話にひと花咲かせてくれる人たちもいる。
そんな人たちを「DAWA日記」では、【旅ネタな人たち】と命名した! |
日没を堪能した翌日、日の出を見る為に珍しく早起きをした。
ふだんなら、すっかりお日様が昇りきってからようやく起きるし、初日の出なんて今まで一度も見たことのない私なのだが。・・・・これはひょっとしてグランドキャニオンの魔力なのだろうか・・・?
なんたらポイントに到着。日の出前とあって辺りは真っ暗。駐車場には車は一台も来ておらず、どうやら一番乗りらしい。車を降り自分たちの場所を確保。うっすらと空が白み始めてくる。少しづつ人も集まり始めてきた。
おかげさまで日の出は、なんのジャマもはいらず、ゆっくりと朝日をみつめることができた。
日の出を見終わり、少し仮眠をとって朝食を済ませる。そして、今回のグランドキャニオン訪問のメインイベント「谷底へ下る」の決行である。やはり、グランドキャニオンは眺めてるだけではもったいない。「大峡谷のなかで大自然を堪能しよう!」と思ったわけである。。
まずは、これから下ろうとする谷底を上からのぞいてみるが、谷底なんて見えやしない。見えるのは、奥深くまで通じるトレイルとそこを歩いている数多くの観光客。その観光客でさえ、アリくらいの大きさにしかみえない。
いざ、出発。大自然の中に突入開始!!!歩いて5分もたたないうちに写真撮影開始。テ−マは「大自然の中の小さな自分」ってな感じで大自然をバックに小さく自分を入れてもらった。ほどなくして、トレイル脇にリスを発見。人慣れしてるのか私達が近寄っても逃げるそぶりもない。これも記念撮影。
意気揚々と底へ底へと下る足は軽やかだ。すれ違う人々は口々に「ハロ−」、「ハ〜イ」などと声をかけてくる。私達を日本人と見た人は片言で「コンニチハ」と声をかけてくる。最初のうちは、照れくさくて笑顔だけで返したり、小さな声で「ハロ−」と言っていた。それなのに、気が付くとこちらから声をかけてる自分を発見!!!!すんごく心地がよい。これもグランドキャニオンの魔力?下を見下ろすとやはり谷底は見えず、上を見上げると出発地点だったところもすでに見えない。まさに、大自然真っ只中。
そこへ、下の方から元気良く駆け上がってくる十歳くらいの3〜4人の少年たちがきた。みると顔立ちから、インディアンの少年たちである。息をハァハァさせようやく登ってくる観光客たちの間を、するりするりと追い越し、慣れたような足どりで軽やかにかけあがっていった。そういえば、谷底に暮らしているインディアンの人たちがいるっていう話だ、きっと彼らはそこの子供たちなのだろう。慣れてる道とあってかなりの余裕で上がっていく。
彼らを見送り、さらに私達は下へ下へと下っていく。それからどれくらい経ったことだろうか、さっきの少年たちが再び私達を追い越し、ものすごい勢いで下っていった。手にはそれぞれペットボトルのジュ−スを持っている、「うぁ〜、さっきの少年たち上までいってジュ−ス買ってきたんだ〜。慣れているとはいえ時間にするとやたら早くない?やはり現地の子はすごいな〜。」と感心してしまった。
一時間くらい下ったろうか?上りの時間を考えてそろそろ下り半ばで切り上げることとなった。その日はグランドキャニオンを後にしてモニュメントバレ−へと移動することになっていたからだ。
下りのときとは全く逆で足どりも重い。10歩進んでは「はぁはぁ」の繰り返しだった。すれ違う下りの人たちは、このみっともない私に励ましの声をかけてくれる。同じく上りで追い越していく人たちも口々に声をかけていってくれる。「あのカ−ブまで・・・」、「あの木のところまで・・・」と目標を定めながら重い足をやっとこさ前に進める。
すると、またもや下の方から元気な声が聞こえてきた。見ると、やはりさっきの少年たち。キャッキャキャッキャと楽しそうに私を追い越していく。もしかして谷底までいってまた上ってきたのではないでしょうね〜、私達に比べ地元の子供たちはさすがにタフね〜。私達はというと、やすみやすみ上っていくのがやっとなのに、あの少年たちは走りながら、しかも、なんどもいったりきたりしている。
きっと、谷底に住んでいるインディアンは、こんな上りを苦もなく思い、用事のたびに、往復しているのだ。便利な生活になれ、楽をしている自分が何か、なさけなくなった。逆に、昔ながらの土地に住み、畑を耕し、便利さと引き替えに私達が忘れてしまったものを、今も守りつつ生活している彼らが偉大に思えた。
そんな事を思いながらも今は自分のことで精一杯で、それ以上は何も考えることはできなかった。下りの時間と比べ上りに費やした時間は倍以上、ようやく上りつめ、ほっと一息。
しかし次の瞬間、そんな私は拍子抜けさせられてしまった。私の目に止まったのは、意外な光景だったからだ。
そこには、30人くらいの子供たちが整列してしゃがんでいた。そして、その中に私達が「地元の子」と勝手に思い込んでいたインディアンの少年たちもいた。
「えっ、えっ、えっ、えんそくぅ〜?」
そう、どうやら少年たちは遠足で来ていたらしく、みんなしゃがんで引率者の先生らしい人の話をおとなしく聞いていたのだった。
あの軽やかな足どりは、なんだったのだろう。考えてみるとジュ−スを買って戻ってくるまで、異様に早かったような気がする。きっと少年たちは、私達の少し先に下りはじめ、そして、私達の前をいったりきたりしていたのだろう。
グランドキャニオンを訪れたのは3年前。それなのに、ノンストップおやじ(前月号のDAWA日記参照)や現地の少年たちもどきが私の頭の中に明確に焼き付いている。
「大自然を目の前に人生観は変わる」といきごんできた私だったが、なぜか思い出すのは彼らたちのこと。2日間にわたるグランドキャニオンの旅はこっけいな出会いで終わった。
今、思い返すとこれで良かったと思う。カッコ良くおさまることが似合わず、こっけいに終わった旅が、もしかしたら自分らしかったのでは?と改めて自分を見直すことが出来る旅となった。
やはり、グランドキャニオンは人生観を変えてくれる!!!!!
のかもしれない。
PS
後日、再確認したところ、谷底の村はハバスパイ村といい、正確にはグランドキャニオンではなく、グランドキャニオンにつながるハバスキャニオンで、そこにいくためには私達の下ったトレイルとは別のル−トを下らなければなりません。
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