title2.gif
                               

 vol.18

  雪の話し  

 回数的に考えてみると、今までの買い付けで最も多く訪れている月は、2月。この2月が結構クセモノ。乾燥地帯のイメ−ジがやたら強いアリゾナやニュ−メキシコだが、やはり冬には雪が降る。私たちの2月の渡米では、「着いたその日(夕方以降)は雪が降る!」というジンクスがある。そのジンクスも今のところ100%の確率。
 着いたその日は、空港からレンタカ−で夕方3時間くらい移動する。そして毎回の事ながら雪は容赦なく降ってくる。雪国に住んでいるのだから雪道ドライブには慣れているはずなのに、そんなのなんの得にもならない。なぜなら、レンタカ−はスタッドレスタイヤではなく、冬でも普通タイヤなのだから。
 それでも、でっかいトラックたちはそんなのお構いなしに、ビュンビュン当たり前のスピ−ドで、しぶきを派手にあげながら私たちの車を追い越していく。前のめりになり、しっかりと10時10分の位置でハンドルを握り、目を大きく開く。かなりスリルあるドライブだ。なんとかモ−テルに着く頃には、運転中力が入ってたせいで、肩がバンバンに凝っている。
 翌朝がまた大変、バリバリに張り付いたフロントガラスの氷を溶かすことから始まる。
 雪と言っても私たちの住んでいるあたりの雪とちょっと違う。雪なのに水分があまりなく、パサパサしていて、アラレににた感覚。それが車に張り付いて、遠くから見るとまるで巨大な卵のカラのよう。払っても落ちるものではなく、びっちりとかたまってくっついている。ガリガリくん(本当の呼び名不明)があれば、簡単に氷を削ることができそうなのに、それもないのでヒ−タ−に頼るしかない。溶かすのにかなり時間がかかる。
 そして道路は、アイスバ−ンかシャ−ベット。下手すると、またもや吹雪の中を行動ということもある。しかし
、そんな苦労する雪も、不思議と昼頃には溶けてしまい、ポカポカ陽気に変わることが多い。
 ホピへ向かったある日、モ−テルからずっ−と吹雪だった。村に着いてみると、一面うっすらと銀世界。ホピの村にも雪が降るんだなあ−と思った。ただでさえ、ホピの村に来ると神聖な感じを受けるのに、雪に覆われたその日のホピの村は一層静まりかえっていて、更に神秘的な印象を受けた。
 また、雪と言えば、ちょっとだけ不思議だな〜と感じた事があった。数年前の買い付けで、やはり2月のこと。サンタフェのモ−テルのドアを開けると、大粒の雪が降っていた。前日のサンタフェは、気持ちの良い穏やかなポカポカ小春日和、半袖の人もいたくらいだった。・・・・なのに。
 しかたなく吹雪の中を車でサントドミンゴへ向かった。大粒の雪がフロントガラスに向かってくる。視界も悪い。本当、最悪なドライブだ。
 しかし、サントドミンゴの村に近づくにつれ雪は次第に弱まり、着いた頃には止んでいた。
 いつものように知り合いのお家へ行くと、そこのおじいちゃんが居間でTVのニュ−スを見ていた。そして、「見てご覧よ、アルバカ−キはこんなに大雪なんだよ。」 TVには、大雪模様のアルバカ−キの映像が映っていた。しかし、その光景は、私たちの来た先程のサンタフェの雪模様となんらかわりはない。そのニュ−ズを見て驚いているおじいちゃんにわたしは驚いた!
 そういえば、サントドミンゴの村には、雪が降った形跡が無く、道路もきれいに乾いていた。何でなんだろう????TVで映し出されたアルバカ−キと私たちが来たサンタフェには、雪が当たり前に降っていた。サントドミンゴの村は、アルバカ−キとサンタフェのほぼ中間に位置し、その2都市を結ぶハイウェイから、ほんの少しだけはずれたところにあるのに。なんで雪が降らなかったのだろう?す〜ごく不思議だ。

   雨の話し   

 先月の買い付けで初めて雨にあたった。今までの買い付けで、雨にあたった事がなかったので、私の頭には雨が降るなんて、これっぽちもなかった。
 よく考えると、乾燥地帯といっても植物だって生えているし、ミゾのように干上がった川もいくつも見ている。だから、まったく雨が降らないなんてありえないのだ。でも、不思議といままでは、雨に一度もあたっていない。それが、今回の7月買い付けで、運良く?雨に遭遇した。(後で聞いたら、7月前後は雨期にあたるらしいです。)
 夜中、宿で寝ていると”ザ−”と聞き慣れた音がしてきた。でも前日まで、梅雨時期の日本にいた私は、なんら違和感を感じること無く、その音を聞きながして、再び寝ていた。
 翌日は、素晴らしい晴天。気温は40°Cぐらい。いくら湿気がなく、カラッとしていると言っても、さすがに暑い。この時点で、昨晩の雨音は見事に私の記憶から消えていた。そして、夜中。またもや”ザ−”という音が、半分寝ぼけている私の耳に入ってきた。「そういえば、昨日の夜中もこんな音がしてたな〜。そうか、雨が降っているんだ。」しかし、時差ボケもあり意識がハッキリしない。目を開けようにも、身体がいうことをきかない。そんなこんなで、またしても外を見ることなく眠りについてしまった。
 それから2日後。その日も、いつものように晴れ晴れとした、青空広がる夏らしい天気。車であちこち移動し、お昼にある町の駐車場に車をとめようとしたとき。空を見ると先程の青空はどこへやら、真っ黒い雲がどんどんこっちのほうへ近づいてきた。
 日本だと、いかにも雨が降りそうな天気。イヤな予感がしたので、車の中で様子をうかがうことにした。しばらくして、ポツン・ポツンと雨がフロントガラスにあたる。(やはり降り始めたか・・・・)すると、ポツンポツンの雨が次第に強まり、ものすごい勢いで降ってきた。ずっと向こうには稲妻が光り、雷も鳴り始めた。スコ−ル?夕立?そんな感じだ。
 とにかく、痛そう。雨粒も日本よりおおきいのでは?車の中は”バチバチッ”とスゴイ雨音がする。「今、車のドアを開けて外に出てみたらきっと痛いだろうな〜」な〜んて考えながら、これ幸いと、フロントガラスの虫の死骸をワイパ−できれいにし、雨が止むのをじっと待った。
 30分後、雨は小降りとなった。用事をすませに車を出、建物に入った。さらに30分後、外に出てみると、先程の大雨はウソのよう。いつのまにか、空はいつものように、鮮やかな青空。道路もそんなに濡れていない。雨の前となんら変わらない様子。
  いや、でも明らかにどこか違う感じがする。そう、湿気とともにモア〜ンと、何かのニオイがするのだ。いままで経験のないニオイ、「きっと、これはここの大地のニオイだ!そうか、この町は、こんなニオイなのか。」良いとも悪いともいえないニオイ。いままで訪れたときは、乾燥していて気づかなかった。
 それから、なんとなく雨上がりが好きになった。雨上がりにしか、感じることのできない大地のニオイ。今度は、ホピの村で雨上がりを体験したい!いったい、どんなニオイがするんだろう?