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VOL.24

 誰にでも何度も足を運びたくなるお店ってあると思う。品揃えの良いお店、親切な店員さんのいる店、また食べたいって思える味を持つお店、etc・・・。私たちの買い付けの旅でもそんなお店がある。それが『ア−ルズレストラン』だ。今回はこのア−ルズレストランのお話を書いてみた。
 私たちの旅はなるべく質素・倹約が必然的モット−となっている。その為、倹約しやすくなるのが食事だ。カフェやレストランで外食すると、チップを払わなければならない。それで、ファ−ストフ−ドとかス−パ−のデリ、フ−ドコ−トなどを利用する事が多い。
 こんな私たちのささやかな贅沢は『ア−ルズレストラン』で食事をすることだ。レストランといっても高級なところではなく、いわゆるファミレスのような感じで、ジ−ンズ姿の私たちをこころよく迎えてくれる。周りのお客さんを見ても作業靴なのか、靴にどろんこをつけたナバホのおじさんとか違和感なく存在する。視線には入ってこないが、どこかのテ−ブルで「♪♪ハッピ−バ−スデ−トゥユ−♪♪」と子供の歌声が聞こえてくる。誰かのお誕生会をしているようだ。目に見えてくるもの、聞こえてくるもの、全てが私をほんわかさせてくれる。
 おっ〜と、その前にお店に入るところから紹介しなければならない。レストランの駐車場から車を降り、店に入るところから私の好奇心がそそられる。店先には近隣のナバホのインディアンたちが簡易テ−ブルに布を敷き、それぞれに自分たちが作ってきたアクセサリ−や雑貨などを展示・販売している。いつもなら一通りパ〜とながめてレストランに入るのに、今回は何とも言えないステキな香りが私の鼻を刺激した。それは色とりどりのアロマキャンドルに砂絵が施されたものだった。あれやこれやと香りを嗅ぎ絵をみくらべ、2個購入することにした。値段もお手ごろ価格だ。このキャンドル屋さんはまだあどけなさの残る10代の少年だった。丁寧に梱包してくれ、お金を手渡すと隣の店のおばちゃんが「いいわね〜、そっちは売れて〜」なんて少年を冷やかしている。楽しい買い物だ。(そういえば、ここで買い物するの初めてだ〜)買ったアロマキャンドルが割れないよう胸にだきしめレストランへ向かった。
 テ−ブルに座りオ−ダ−も終え、食事前の飲み物がまず運ばれてくる。ジュ−スをチュ−チュ−すすりながらいつものようにキョロキョロ視線だけを動かす。他の人が何を食べているのか気になる。ウエイタ−の運ぶ料理をテ−ブルに着くまでおいかける。それがおいしそうだと思えば今度来たとき食べようと考える。
 他の客が帰ろうとするとき、チップをどれくらい置いたか遠巻きに覗く。もしチップを置いていかないとウエイタ−がかわいそうだし、逆に多いと私たちがかわいそうになるからだ。チップの相場を知りたいのじゃ。
 そして、このレストランにはウエイタ−・ウエイトレス以外にも各テ−ブルをまわる人々がいる。それはさっきの店先にテ−ブルを構えていたナバホの人々や、その他のナバホの人たちが、自分たちの作品をテ−ブルのお客に見せながら販売しに来るのだ。
 主にアクセサリ−が目に付くが他に壺や絵画などもある。その中には5〜6歳の子供から年老いた人まで年齢層は幅広い。そういう人たちを見ると「誰か買ってくれ〜」と応援したくなるが、いざ自分の所へとなるとちゃっかり断っている。ここで不思議に思うのが、1度断られると2度と来ないということだ。さっきのキャンドル売りの少年もトレイにキャンドルを並べて店内を歩いていた。私たちのテ−ブルを通過ぎる時にはニコッと微笑んでいった。この店内販売をしてる人たちは適当にテ−ブルをまわっているのではなく、1度まわったテ−ブルの人の顔や買ってくれた人の顔をちゃ〜んと覚えているのだ。案外、律儀だな!!!
 そうしている間に、ある物体が私のヨコを通り過ぎた。それは冬だというのに肌がスケスケの黒のシ−スル−姿で腕なんかはムキムキパンパン、下には超ミニスカ−トで腕に劣らずの太〜い足を持つ白人女性だった。どのツラさげてこんな格好してるのか興味が湧きテ−ブルにつくまで目で追いかけた。
 彼女は店の1番奥のテ−ブルにつき、カベを背にして席についた。離れてはいるが彼女の顔を見ることができた。服装と後ろ姿で30代のアバズレ女を想像していたが、なんとそれは50〜60歳くらいのやや年配のオババであった。オババであってもアバズレ風な雰囲気が出ていた。この女、ナバホの人がまわってくる度にいろいろと時間をかけて物色し、そのあげく買わずに帰している。ナバホの人が気の毒に思えた。なんか本当に見た目だけでなく根っからイヤなヤツだった。
 これまでナバホの人たちに内心「ガンバレ〜」とエ−ルは送っていたが、自分のところにくるといつも「No thank you!」ばかりだった。でも今回は違う!正直に言うとここに来る前からこの「ア−ルズレストラン」について書きたいと思っていたので、その為にというか話のネタに何か買いたいな〜と思っていた。私が買った物はナバホっぽいものとはほど遠いものだった。今回の訪問が2月のバレンタインデ−直前だったので、それらしい雰囲気のものも売られていた。見た目のかわいらしさに惹かれ購入を決意。赤いプラスチックのコップの中ににチョコレ−トやキャンディの詰め合わせが入っていてハ−ト型のストロ−が2本とバラの造花がさしてあった。
 そんなことをしてると食事が来る。来るたびに周りの人の料理を覗いてメニュ−を研究している。その割に頼むのはいつもきまって一緒だ。「ティ−ボ−ンステ−キ」だ。ボリュ−ムはあるし、おいしいし、まずオ−ダ−しやすいからだ。
 ステ−キはやたらでかいしうまい。サラダはバイキング形式になっていておかわり自由だ。ここ数年のおかげで、まずいドレッシングとおいしいドレッシングの見分けもつくようになった。このほかにパンやポテトや添え物が付くので、とても1度では食べきれない量だ。
 これは、もちろんお持ち帰り。持ち帰り用のパックを店員さんにもらい、残したポテトやステ−キをモ−テルにもっていって酒のつまみにしたり、翌日の朝食にしたりする。
 食事も終わり、チップをテ−ブルに置きレジに向かう。相棒が支払いをしている。その間、わたしはなにげに自分たちの座っていたテ−ブルに目を向けた。親切だったナバホのおじさんウエイタ−が、早速来て片づけに入っている。皿にはさんだチップに気が付きポケットにしまいこんだ。
 その瞬間、彼と目があった。「THANK YOU」と声には出さず口だけ動かして私に満足そうな笑顔で答えてくれた。