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 vol.7

 ユタ、コロラド、ニュ−メキシコ、アリゾナ、これら4州の境界線が「フォ−コ−ナ−ズ」できれいにクロスする。アメリカ全土でこんな場所は「フォ−コ−ナ−ズ」だけ。そこだけと知ってしまうと無性に行きたくなり、しまいにはクロスする1点に立ってみたいとついつい欲が出てきてしまう。・・・・ということで今回はフォ−コ−ナ−ズでのお話である。
 宿泊先のニュ−メキシコ州ギャラップの街を朝の7時に出発。まだ薄暗くてバリバリ寒い。車のフロントガラスに張り付いた氷をとるのに時間が少々かかった。フォ−コ−ナ−ズへ向けてギャラップから国道666号を北上する。
 2時間ぐらい走ったろうか、「ここはモニュメントバレ−?」と錯覚してしまいそうな赤土の大平原に、赤土の巨大なモニュメントがニョッキ、ニョッキと前方の至るところに出てくる、出てくる。そのモニュメントたちは、そこにいるのが当たり前という感じで堂々と立っていた。
 そんなこんなで赤土のモニュメントを車窓から何個か通り越していくと、まずは、今回の目的地の1つ目、「シップロック」が近づいてきた。
「シップロック」とは、ナバホ居留地最大の街の名でもあるが、今回の目的は街ではなくて、その街の手前にある「シップロック」という岩の塔なのだ。車からそれらしい岩山とそれに連なるかのようい続いている岩々がうっすら見えてきた。
 さらに、国道666号を北に進むと左側にシップロックに関するヒストリックマ−カ−と呼ばれる看板が目に入った。そこに書かれている地図どおりに看板の手前のインディアンル−ト13号を西に入り、さらに約10km車を走らせた。先程からランドマ−クのようにそびえていた岩のかたまりは、徐々にはっきりと大きく目の前に広がってきた。
 まさに名前の通り、船(岩塔)が波(岩脈)をきって進んでいるようである。周りのなだらかな地形の中、500m以上高くそびえた岩の塔と、それに続くまるで魚のひれのように、平べったく長い岩脈とで、形づくられているシップロック。今まで見たどんな地形とも異なるとても不思議な景観だ。特に、岩脈は真横から眺めると岩が地中から押し上げられ、地表を突き破って空高く、そびえたった様がはっきりとわかり、改めて自然の巨大な力を思い知らされた。
 「シップロック」はナバホ語で「ツェ・ビタイ」と呼ばれ、それは「翼の岩」という意味が込められている。まさに岩の塔は翼を持ち、空高く飛んでいきそうな躍動感、力強さ。見ている私達までもが内から力が湧いてくるような気がする、そんな不思議な気持ちにさせてくれた。
 今来たインディアンル−ト13号を戻り、国道666号をさらに北上、ここでシップロックの街を通過し、国道160号にぶつかったところを左(西)に曲がる。
 いよいよ、もう1つの目的地「フォ−コ−ナ−ズ」である。
 まず、フォ−コ−ナ−ズモニュメントに入る目前にゲ−トがあり、ここで1人2ドルを支払った。50〜100mくらいでフォ−コ−ナ−ズにたどりついた。最初、そこがフォ−コ−ナ−ズであるという実感が湧かないほど簡素で人気のないところだった。円を描くように土産物屋の小屋が建ち並びその中央に4州の旗がひるがえっていた。適当に車を止めて、まずはビジタ−センタ−へ。
 ビジタ−センタ−とは名ばかりで、入ってみるとそこには1人の女性が大きな机を前にして座っていた。彼女はそこでサンドペイントを描いていた。近寄ってみると、この砂はすべて天然のものからできていること、またその産地等を、彼女は親切に教えてくれた。サンドペイントは彼女の手によって実に見事に描かれていった。あまりの感動に写真を撮らせてもらい、記念に1枚フォ−コ−ナ−ズらしいサンドペイントを購入した。
 再び外へ出て、まずは腹ごしらえ!!ビジタ−センタ−のすぐ脇に屋台が出ており、念願だったナバホのフライブレッドを食べた。フライブレッドとは揚げパンのことで、今回はシュガ−のみのトッピングで食べてみた。素朴な味で初めて食べる味なのに、なぜかなつかしい感じの味がした。小さい頃に食べたホットケ−キに砂糖をまぶしたものが、ふと思い出された。もう1つ、ナバホバ−ガ−を食べた。揚げパンに、ハンバ−グ、レタス、トマト、玉ねぎ、そして味付けはトマトケチャップ。こちらも素朴なんだけど、食べ応え充分だった。
 フォ−コ−ナ−ズへたつ前に、グルリとその辺を1周してみた。州旗に従い、それぞれ4州を眺めてみると、なる程って感じがした。
 コロラドの方を向くとロッキ−山脈の連なった山々が雪化粧をしていた。ニュ−メキシコのほうを向くと、先程見てきた平原の赤土にシップロックがどんと構えていた。アリゾナを向くと緑々した植物が目に入ってきた。ユタを向くと、その先にはモニュメントバレ−があるのだな〜と匂わせるような赤い土の乾燥した感じが伺えた。
 さあ、いよいよフォ−コ−ナ−ズの頂点!!!何人もの観光客がしているように、私も頂点に立ち記念撮影。
 でも、いざ撮ってみると別段感動するわけでもなかった
 帰りの車の中で思い出すのはナバホのフライブレッドの味だけだった。
 今回、フォ−コ−ナ−ズを訪れる際、私は境界線が交差する1点のみに注目、関心していた。そして、いざフォ−コ−ナ−ズモニュメントに行き、4州の交差する点で何の感動すら味わう事なく帰ってきた。そこに着くまでの期待感とそこを後にした時のがっかり感、この気持ちのギャップは何なのだろう?
 自然の力によるシップロックに比べ、フォ−コ−ナ−ズモニュメントは所詮文明人が勝手に区切った境界線がたまたま1点に交差したにすぎない。観光の記念としてフォ−コ−ナ−ズを訪れ、写真を撮るのも良いかもしれない。しかし、この先、生きていく中で思い出のインパクトとしてこのポイントはそう思い出せないに違いない。

  後日、日本でこのフォ−コ−ナ−ズ一帯を含む保留地に住むナバホ族の言葉を目にした。
「このフォ−コ−ナ−ズ一帯の景観は深い意味と力を秘め、そこに宿る精霊と調和し、そこに暮らせば人間もここの美しさと一体になれる」
 私なりの反省から、ここを訪れようとする皆さんへのアドバイス!!!
ただ、フォ−コ−ナ−ズ1点に気をとらわれず、ナバホの言葉のように、フォ−コ−ナ−ズ一帯(先に紹介したシップロックやその他)の素晴らしい大自然を、ぜひ見て、何かを感じてほしい。人間が作った観光ポイントと、自然が作り上げた神秘的な景観。
 改めて自然の偉大さと美しさ、そして、我々のちっぽけさを感じられる事だろう。